災害文化研究分野の蝦名です。
この程、新たにコロナ時代への対応を目指した市民参加型の研究実践として「疫病退散プロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは、地域に残る様々な疫病文化に関連した情報を皆様から募集するとともに、近年新しく開発された「ひかり拓本」技術などの技術を公開・提供するという新たな市民参加型の研究手法で実施します。この情報のやりとりは、このホームページを通してオンライン型で実施し、コロナ時代に適合した研究の形を目指します。また、寄せられた情報については、歴史や民俗の研究者に加え、医学の研究者も参加した、文・医連携型の研究で分析・考察を進めます。
ご存じの通り、新型コロナウィルスの流行をうけて私達の生活は様々な制限をうけるとともに、仕事や教育などのオンラインへ化が加速度的に進むなど、大きく変化しています。一方で、疫病退散の御利益があるとされる神社や妖怪アマビエへの注目にみるように、昔の信仰や生活の中に存在した“疫病退散”を願う文化に新たな関心が寄せられています。今回のコロナウィルスは、決定的な治療法や予防法が確立していない状況の中で、現代社会に大きな動揺をもたらしましたが、考えてみれば、近代医学が成立する以前の人々にとって、疫病は生命や社会を脅かすより身近な存在だったのではないでしょうか。
江戸時代、天然痘(「疱瘡」)や麻疹(はしか)、コレラなどが度々流行し、多くの死者が発生していました。私の住む仙台市内をざっとみても、「疱瘡神」に関連した石碑や、疫病退散を掲げる神社、疫神としての神格をもつ牛頭天皇に由来する神社が多数存在しています。また、会津地方の「赤べこ」や飛騨高山の「さるぼぼ」といった赤く塗られた玩具には、疫病除けの意味もあると伝えられています。先人が疫病に強い関心を持っており、その災難から逃れることを祈念するのが日常化していたことがうかがえます。
疫病がより身近な脅威だった時代、先人はいかに疫病を克服、または共生していったのか。これを解明することが、今日コロナウィルスの脅威の中に生きる我々の道標にもなるのではないでしょうか。その謎を、研究者や専門家だけではなく、一般のみなさまとも一緒に考えていくのが、この疫病退散プロジェクトです。
疫病に関する石碑や文書、疫病退散の御利益がある神社やお札、祖父・祖母などが語ってくれた疫病に関する伝説やおまじないなどの情報がありましたら、下記の投稿フォームより是非お送り下さい。
また、石碑の文字情報を手軽に、かつ正確に収集できる「ひかり拓本」の技術について、特設ページで解説をしています。近日中に講習会の開催も実施したいと考えておりますので、今後の更新情報も是非ご覧下さい。
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